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Fluid Control Engineering

流体制御エンジニアリング

蒸気システムについて:スチームトラップの種類

1. 機種別分類

大分類 作動原理 中分類 特徴
メカニカル
スチームトラップ
蒸気とドレンの比重差 バケット型
・I.B.式(逆バケット)式
・バケット式
・排気性能良好
・構造簡単・長寿命
・ウォータハンマに耐える
・蒸気漏洩が少ない
・耐久性に優れる間欠排出
フロート型
・レバー付きフロート式
・静粛動作
・連続排出
・蒸気漏洩が少ない
・ウォータハンマに弱い
サーモスタチック
スチームトラップ
蒸気とドレンの温度差 ベローズ型
バイメタル型
・排出ドレン温度制御可能
・排気性能良好
・弁閉塞の故障がない
・静粛作動
・ウォータハンマに耐える
サーモダイナミック
スチームトラップ
蒸気とドレンの熱力学的特性差 ディスク型
・外気冷却式
・空気保温式
・構造簡単
・小型軽量
・過熱蒸気に使用可能
・ウォータハンマに耐える
メカニカルスチームトラップ

図:TB-811 i.B.式(逆バケット)型
TB-811 i.B.式
(逆バケット)型

図:TF-6 レバーフロート型
TF-6
レバーフロート型

サーモスタチック スチームトラップ

図:バイメタル型
バイメタル型

図:TS-1A ベローズ型
TS-1A
ベローズ型

サーモダイナミック スチームトラップ

図:一般ディスク型
一般ディスク型

図:TD-10NA 空気保温式
TD-10NA
空気保温式

2. 作動原理とメリット・デメリット

(1) I.B.式(逆バケット式)スチームトラップ

作動原理(TB-811)

図1

バケットは自重により下降してトラップの底部に位置し、バルブは全開の状態となっています。
本体内に流入するドレンはバケット及び本体を満たし、余剰のドレンは全開のバルブを通って排水されます。

【注意】
初期取付時には、配管のストップ・バルブを閉めてドレンを溜め、このドレンをトラップ内に充満させて水封を行ってから始動してください。

図2

蒸気およびエアーと気体との混合体はトラップ内に流入するとバケットの上部に溜まります。
この混合体の量が一定以上(バケットの約2/3)に達すると、バケットに浮力が生じて上昇し、バルブを閉弁します。
ドレンの流入がなければ、トラップは閉弁し続けます。

図3

トラップにドレンが再び流入すると、バケット内部の蒸気が凝縮し、バケット内の液体のレベルが上昇します。
この速度はドレンの流入量により加減されます。
また、バケット内のエアー等の気体は、バケット上部のエアーベントを通して排出され、トラップの上部に溜まります。
このエアーベントからは蒸気も排出されますが、本体内には圧力差がなくスチームとドレンの比重差のみによる非常に微細な気泡としてドレン内を上昇するため、トラップ上部に到達するまでに凝縮し、スチーム・ロスとはなりません。

図4

ドレンの流入により、バケット内の蒸気の凝縮による液体レベルの上昇が続き、一定位(バケットの約1/3)を越えるとバケットは浮力を失って沈みバルブが開きます。
トラップ内部に溜まった気体がまず排出され、続いてドレンが異物と共にバルブを通って排出されます。
この開弁の頻度はドレンの流入量により増減します。
バケットのベントより抜けたエアー等の気体が多量にトラップ上部に溜まり、バケット内部の水位を押し上げることによってもバケットは浮力を失い、沈むことによって開弁し、気体を排出します。
以上で作動サイクルは完了し、このサイクルが反復されます。

動画

I.B.式(逆バケット式)
スチームトラップ動作原理

(3MB)

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メリット
ドレン滞留なし

蒸気とドレンの比重差で作動する為、ドレンの滞留はありません。

もちろん耐久性

独自の内部構造が驚異の耐用年数を可能にしました。
下のグラフが示すように、ディスク式では2年以内に吹き放しに達しますが、逆バケット式は3年以上にわたり、蒸気損失量の変化がありません。

グラフ

省エネルギー化

間欠作動の効果で配管内壁の空気膜等を取り去るため、熱効率を大幅にアップ
しかも、従来のものと比べて、軽量・コンパクトの省エネ設計です。

スケールに強い

スケールを微粉状にする構造となっていますので、原則として入口側のストレーナは必要ありません。

デメリット
  • 凍結に弱い
  • 一部機種を除いて取り付け方向の制限がある。
  • ディスクトラップなどに比較して、本体が比較的大きい。
  • 固定レバー式は局部摩耗する。
(2) フロート式スチームトラップ

作動原理(TF-6)

図1

始動時にはフロートが降下して、バルブは閉弁状態となっています。システム及び配管内の多量エアーは、ベローズ式のエアーベントから排出されます。ドレンの流入によりフロートは浮上し、バルブを開弁させドレンを排出します。エアーは継続してエアーベントから排出します。

図2

蒸気がトラップに流入してくれば、蒸気の温度にてベローズ内の圧力が上がり、伸びエアーベントが閉弁します。ドレンが継続して流入すれば、その流入量にバランスしてフロートの位置が決まり、それによりバルブ開度も定まりドレンは連続して排出されます。

図3

エアーや非凝縮性ガスがドレンと共に流入すると、本体上部にたまり、その温度が飽和蒸気温度より2~3℃降下すると、エアーベントが開弁しトラップ外へ排出します。

動画

フロート式
スチームトラップ動作原理

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メリット
ドレン滞留がない

I.B.式同様に、蒸気とドレンの比重差で作動する為、ドレンの滞留はありません。

圧力差に強い

入口圧力の変動や背圧に影響されず、安定した作動をします。特にドレン回収には最適です。

省エネ設計

バルブシートが常に水封されていますので、蒸気損失がありません。

早いウォーミングアップ

ベローズ式空気抜弁を内蔵、通気初期の配管内の空気をすばやく排出します。

デメリット
  • 密閉フロートのため、ウォーターハンマーに弱い
  • 凍結に弱い
  • レバーフロート型はレバー機構のため、本体が比較的大きい
(3) サーモスタチックスチームトラップ

(a)ベローズ型(TTF-1)

図1

始動時にはベローズは収縮して開弁しエアーやドレンが排出されます。弁は蒸気が流入するまで全開の状態に保たれます。

図2

蒸気がトラップ内に流入すると、ベローズ内の封入液が熱せられ蒸発し、内部の圧力が上昇するとトラップ内の圧力とバランスしながらベローズは膨張してバルブが閉弁します。

ドレンやエアーがトラップ内に溜まり、温度が飽和蒸気温度より若干低くなるとベローズは再び収縮して開弁します。

動画

サーモスタチックスチームトラップ
(ベローズ型)動作原理

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メリット
  • 排気性能が良い
  • 作動が静かである
  • 小型・軽量
デメリット
  • 基本的には飽和蒸気温度よりも低い温度で作動するため、ドレンの滞留がある。
  • ベローズの疲労、腐蝕のため耐久性に劣る。
  • ウォーターハンマーに弱い

(b)バイメタル型

図1

サーモスタチック型でバイメタル式トラップは、バイメタルと呼ばれる熱膨張係数の異なる2種類の金属板を接着し、加熱により湾曲することを利用してエレメント部に用いたトラップです。

図2

バイメタルには各社により各種の組合せや形状が試みられていますが、個々の蒸気圧力により調整が必要であったり、ベイメタルの作動には飽和蒸気温度と温度差が要求されます。

メリット
  • 排出ドレン温度を制御することができる
  • 低温空気の排出性能が良い
  • 作動が静かである
  • ウォータハンマーに強い
デメリット
  • 基本的には飽和蒸気温度よりも低い温度で作動するため、ドレンの滞留がある。
  • 調整が悪いと閉弁遅れによる、蒸気ロスの可能性がある。
  • バイメタルの疲労、腐蝕のため耐久性に劣る。
(4) サーモダイナミックスチームトラップ

(a)ディスク型(TD-10NA)

ディスク式トラップは小型・軽量であり取付スペースが少なく、取付方向に制約がないため多用されてきました。
この型式のトラップは稼動部がディスクだけという、構造は単純で小型であるという利点があります。

図1 図2

ドレンとエアーが変圧室のまわりの保温用ジャケットを通り、ディスク下面に達しディスクを押上げ、ドレンとエアーは出口側へ排出されます。
ディスク部に達 する蒸気は、ディスク下面を高速で通過するため、この部分の圧力が降下しディスクは閉弁します。
変圧室内の蒸気圧力は、徐々に漏れて圧力が減少します。
この結果ディスク下面の圧力に負け開弁します。
この時ドレンがあれば排出され、蒸気が流入すればただちに閉弁します。

変圧室はスチームジャケット式のため、外気温や風雨により変圧室内の圧力に影響されず空うちが少なくなっています。

動画

サーモダイナミックスチームトラップ
ディスク型動作原理

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メリット
  • 小型・軽量
  • 凍結に強い
  • 取付方向自由
  • 過熱蒸気に利用できる
デメリット
  • 一般のディスク型は外気温に影響を受けやすく、空打ち現象を起こす事がある。
  • 基本的には温度で作動する為、ドレンの滞留の可能性有り。

アドバイス

スチームトラップには要求される100%を満足するものはありません。
システムの高効率化、省エネルギーを考えた場合、これに対するいくつかの選定のポイントが出てきます。

  1. ドレンの滞留のない事
  2. ドレン回収の為、背圧の許容性の高い事
  3. 熱効率の面で、ドレン排出が間欠作動をする事

この3つの条件を満足し、さらに蒸気漏れがなく耐久性に優れ、保守・点検が簡単な事が大きなポイントです。

以上の事を考えれば、ディスクトラップはイニシャルコストが安く配管が容易ですがドレンの滞留、背圧の許容性に問題があります。
フロート式のトラップは連続作動で大容量が可能ですがウォーターハンマー、凍結に弱く、サーモスタチックは作動音が静かですが、大容量に対応できない。
IB式(逆バケット)トラップはあらゆる性能面でバランスが良く様々な場所への採用が可能ですが、凍結には弱い。
其々のトラップには一長一短がありますので、最適なトラップの選定のお手伝いはヨシタケにお任せ下さい。

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